宇宙の謎(なぞ)を解(と)き明かす宇宙探査(うちゅうたんさ)。2020年のハイライトは、なんといっても「はやぶさ2」によるサンプルの帰還(きかん)でした。

2021はさらにすごい年になりそうです!来年に予定されている宇宙探査イベントをまとめてみました。

2月:3+1機の探査機が火星に到着!

2020年に地球を出発した3機の火星探査機(たんさき)が、2月に次々と火星に到着(とうちゃく)します!

2月9日:Hope(UAE)〜中東初の火星ミッション

Hopeは日本のH2-Aロケットによって打ち上げられたアラブ首長国連邦(しゅちょうこくれんぽう)(UAE)初の火星探査機です!2月9日に火星周回軌道(しゅうかいきどう)に投入されたのち、2年にわたって火星をまわりながら、火星の大気の謎を解くための観測(かんそく)を行います。

2月18日:火星ローバー・パーサヴィアランス(アメリカ)〜恐怖の7分

僕が6年あまりにわたって携(たずさ)わってきた火星ローバー・パーサヴィアランスが、ついに・・・・ついに・・・・火星に到着します!!着陸がミッション全体でもっともリスクの高い瞬間(しゅんかん)。大気圏突入(たいきけんとつにゅう)から着陸までの7分間は地上からの指示を一切受けることなく様々な操作(そうさ)を自動で行わなければならないので、「恐怖(きょうふ)の7分」と呼ばれます。

恐怖の7分を超えたら、その後は約2年にわたって、かつて湖だったジェゼロ・クレーターを走行し探査します。目的は地球外生命探査!!かつて火星が温暖だったおよそ40億年前に生命がいたのかを調べます。また、地球に持って帰ってくることのできるサンプルも集めます。火星サンプルリターン計画については、また後ほど書きますね!

パーサヴィアランスだけでも10万字は書けるのですが、このままじゃ2021年のまとめが終わらないので先に進みましょう。パーサヴィアランスについては別の記事をいづれ書くつもりです。

(Image: NASA/JPL-Caltech)

2月11〜24日:天問1号(中国)〜中国初の火星探査機

中国初の火星探査機・天問1号が2月に火星に軌道投入されます。

探査機は火星軌道(きどう)をまわるオービター、着陸するランダー、そして火星を走行するローバーで構成されています。パーサヴィアランスは惑星間軌道(わくせいかんきどう)から直接(ちょくせつ)大気圏に突入して着陸しますが、天問1号はいったん火星軌道に入ったのち、4月頃にローバーをのせたランダーが切りはなされて着陸します。1976年にアメリカのバイキングが世界ではじめて火星着陸に成功した時と同じ方式です。このほうが多くの燃料(ねんりょう)を食いますが、上空から着陸地点を事前に偵察(ていさつ)できるという利点があります。

火星への着陸は月着陸よりもさらに難しく、これまでアメリカしか成功したことがありません。ロシアもヨーロッパも失敗しています。成功すれば快挙(かいきょ)です。

3月〜5月:火星ヘリコプター・インジェニュイティ(アメリカ)〜史上初の地球以外での動力飛行

火星ローバー・パーサヴィアランスは、小型のヘリコプターをお腹の下に収納(しゅうのう)して火星に連れて行きます。インジェニュイティと呼ばれる火星ドローンで、飛行に成功すれば、史上はじめての地球以外での動力飛行になります!1903年にライト兄弟が史上初の動力飛行を成功させたことに並ぶ、歴史に残る快挙になるでしょう。

インジェニュイティの飛行は、パーサヴィアランスの着陸後90日以内に予定されています。

(Image: NASA/JPL-Caltech)

火星サンプルリターン計画のスタート

地球では、次のステップに向けた準備が始まります!先日、NASAとESAによる火星サンプルリターン計画がフェーズAに入りました。パーサヴィアランスが集めた火星の石を地球に持って帰ってくるためのミッション設計が、2021年に本格的にスタートします!

月着陸ラッシュ!

2020年は僕が知る限り4つもの月着陸ミッションが計画されています!アメリカの民間会社によるものが2つ、ロシアのミッションがひとつ、そして日本からはJAXAによる史上最小の月着陸機です!

6月、10月:CLPS〜民間による月着陸プログラム

民間の会社による二つの月着陸ミッションは、NASAが資金提供(しきんていきょう)するCLPSというプログラムの一環(いっかん)です。NASA自身が宇宙探査機を所有し運用するのではなく、それを民間に任せ、NASAはお金を払って「月着陸サービス」を民間から買い取る、という新しい方式の月ミッションです。

6月にはアメリカのAstrobotic社のPeregrine Mission Oneが、CLPS一番手として月に向かいます。打ち上げるのはULA社の新型ロケット・ヴァルカンの初号機。初号機はトラブルがつきものなので、その分、割引(わりび)きして契約(けいやく)したのでしょう。

10月には二番手、アメリカのIntuitive Machines社によるIntuitive Machines Mission 1がファルコン9ロケットによって打ち上げられます。

(Image: Astrobotic)

10月:ルナ25号〜44年ぶりのロシアの月ミッション

ソ連時代の1976年に無人のサンプルリターンを行ったルナ24号以来、実に44年ぶりにロシアの探査機が月面に向かいます!ソユーズ・ロケットで打ち上げられ、月の南極付近に着陸するそうです。

11月:OMOTENASHI〜世界最小の月着陸機

たった14kgしかない探査機が、固体ロケットとエアバッグを使って月への着陸にチャレンジします!そのなも、オモテナシ!11月に打ち上げられるアルテミス1(これについては後で詳しく書きます)に相乗りする形で月に向かいます。成功すれば世界最小の月着陸機になります!

 

7月:DART(アメリカ)〜地球防衛実証ミッション

7月には非常にユニークなNASAのミッションが打ち上げられます。名はDART、目的はなんと地球防衛(ちきゅうぼうえい)!

宇宙人を倒(たお)すわけではありません。倒すのは小惑星。将来、地球に衝突するかもしれない小惑星の軌道をずらして地球を守るための実験をするのが目的です。

倒すといっても、映画のように爆弾(ばくだん)で破壊(はかい)するのではありません。宇宙探査機が高速で小惑星に体当たりして、その衝撃(しょうげき)で小惑星の速度を少しだけ変えるのです。

どの程度、小惑星の速度が変わるかというと・・・ 秒速0.4 mmです。つまり時速1.4メートル。キロメートルではなく、メートルです。え、たったそれだけ?と思うでしょう。小惑星が地球に衝突するまでに数年の時間があれば、ほんの小さな速度の変化でも、チリも積もれば山となり、十分に衝突を回避(かいひ)できるのです。つまり病気と同じで、地球に衝突する小惑星も早期発見がとても大事だということです。

小惑星への衝突は、2022年10月に予定されています。

(Image: NASA/JHU-APL)

10月:Lucy(アメリカ)〜トロヤ群小惑星探査

これまた先例のないミッションが、10月に地球を出発します!木星のトロヤ群小惑星を探査するミッションです。

トロヤ群ってなに?というところから説明をはじめましょう。

ラグランジュ点、という言葉を聞いたことがありますか?そう、ガンダムに出てくるあれ。

ある天体のまわりを別の天体がまわっている系を考えてください。たとえば、太陽と地球、地球と月、などです。二つの天体の重力がつりあう場所が、ラグランジュ点です。

重力がつりあう場所なんだから、二つの天体の真ん中に一つしかないと思うかもしれません。ところが、不思議なことに5個もあるのです。周回(しゅうかい)運動による遠心力もはたらくからです。5個のラグランジュ点にはL1からL5という名前がついています。

太陽と木星のラグランジュ点のうち、L4とL5には何千個もの小惑星があります。それをまとめて「トロヤ群小惑星」と呼んでいます。まるでチリをほうきで集めるように、木星の強大な重力がここに小惑星をはき集めてしまったのですね。

L4とL5は、木星と同じ軌道上の、木星から前後に60度ずれた場所にあります。

Lucyは2021年10月〜11月に打ち上げられた後、10年以上にわたって太陽系をあっちに行ったり、こっちに行ったりしながら、トロヤ群の6個の小惑星の近くを通って探査をする予定です。

(Images: NASA)

11月:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(アメリカ)〜宇宙で最初の光を捉える!

ああ、長かった・・・やっと・・・やっとです!

ハッブル宇宙望遠鏡(ぼうえんきょう)の後継(こうけい)である、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がついに打ち上げられます!

1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は口径(こうけい、望遠鏡の鏡の直径)2.4メートル。地上にある大望遠鏡は口径が10メートル近くありますから、それに比べると小さな望遠鏡です。でも地球の大気に邪魔(じゃま)されない宇宙空間は観測(かんそく)に最高の場所。30年間で、ノーベル賞をふくむ凄まじい成果をハッブルがあげてきたのは、みなさんご存知のとおりです。

JWSTはなんと口径6.5メートル!ハッブルの7倍もの光を集めることができます。ハッブルは地球軌道でしたが、JWSTは太陽と地球のラグランジュ点、L2に置かれます。L2は地球からみて太陽と逆側にあります。この点から地球と太陽を背にして宇宙を見れば、どちらにもじゃまされずに観測を行えるのです。

JWSTは大幅(おおはば)なコスト超過(ちょうか)とスケジュール遅延(ちえん)をくり返し、世界で一番高価な望遠鏡になってしまいました。プロジェクト・マネージメントとしては失敗と言わざるを得ないのですが、期待される科学的成果はハッブルをはるかに上回るものになるでしょう。目的の一つは、宇宙で最初に生まれた星の光を捉えること。今まで人類が知ることがなかった宇宙開闢(かいびゃく)の謎を解き明かしてくれるでしょう!

(Image: NASA)

11月:アルテミス1(アメリカ)〜有人月探査に向けた最初の無人ミッション

NASAが月にふたたび宇宙飛行士を送るために開発している超大型ロケットがSLS。このSLSも大幅(おおはば)なコスト超過(ちょうか)とスケジュール遅延(ちえん)をくり返す困ったプロジェクトなのですが、その初飛行が2021年11月に予定されています。こんどこそ延期せずに打ち上がってほしいのですが・・・。

SLSで打ち上げられるオリオン宇宙船は、月の逆行軌道を6日間まわった後に地球に戻ってきます。宇宙飛行士は乗りません。ロケットと宇宙船の安全性をチェックするための試験飛行です。

ちなみに、SLSには13個のも小型探査機が「あいのり客」として月に向かいます。そのうち2個が日本のJAXAの探査機。一つは上で紹介した史上最小の月着陸機、OMOTENASHIです。もう一つはJAXAと東京大学が共同で開発した小さな宇宙探査機、EQUULEUSです。地球と月のラグランジュ点(L2)をまわる軌道に乗り、そこから月や地球のプラズマ圏の観測をします。

現在稼働中の探査機

他にも、すでに打ち上がり、稼働中(かどうちゅう)の宇宙探査機がたくさんあります!

  • JAXAとESAによる水星探査ミッション、ベピ・コロンボは水星に向けて航行中です。水星に軌道投入するため、地球、金星、そして水星に9回もフライバイして、重力によって減速します。2021年10月には初の水星フライバイを行います。
  • JAXAの金星探査機・あかつきは金星周回軌道からの観測を続けています。
  • 火星は賑(にぎ)やかです。現在、8機もの探査機が火星軌道や火星の表面で稼働しています。うちわけはアメリカ5、ヨーロッパ2、インド1です。上記の3機が加われば、2021年には11機もの探査機が同時に火星で稼働することになります。もちろん史上初めてのことです。
  • 木星軌道ではNASAの探査機・ジュノーが観測を続けています。2021年には拡張ミッションに入り、木星の衛星を探査することになっています!
  • NASAの小惑星サンプルリターン・ミッションであるオサイリス・レックスは2020年10月にサンプル採取(さいしゅ)を成功させました。2021年3月に地球に向けて出発する予定です。
  • ご存知の通り、JAXAのはやぶさ2はカプセルを地球に帰還させた後、次の目的地、1998 KY26に向けて飛行しています。

2021年も太陽系の様々な場所から大発見が相次ぐでしょう。これまでになくエキサイティングな年になることは間違いありません!

未来が待ちきれない宇宙っ子のために、児童書『宇宙の話をしよう』を出版しました。

先日、重版が決まりました!

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